観測制民主主義⑫ 「家庭教育支援法」はどこから来たのか――政治OSへの入力経路を実査する
観測制民主主義⑫ 「家庭教育支援法」はどこから来たのか――政治OSへの入力経路を実査する
――今回は「監査する」と言うだけでは終わらない
前回まで、政治OSへの外部入力をどのように監査するのかを考えてきた。
しかし、ここで止まってしまえば、単なる「監査方法論」である。
だから今回は、実際に一つの政策を取り上げ、その入力経路を追ってみる。
最初の監査対象に選んだのは、「家庭教育支援法」である。
このテーマを選んだ理由は明確だ。
統一協会の関連団体が「家庭教育支援法」を政策項目として掲げていたことが
確認されている一方で、
この政策要求そのものが、いつ、どこから政治の世界へ入り、
どのような工程を経て政策化されようとしたのかを
追跡できる資料が存在するからである。
まず、最初の確認
最初に確認できるのは、
「家庭教育支援法」という政策構想が、実際に国会へ向かう動きを持っていた
ということである。
国立国会図書館のレファレンス記録には、第193回国会に
「家庭教育支援法の制定に関する請願」が提出され、
審査未了となったことが記録されている。
つまり、「家庭教育支援法」は、単なるネット上の言説ではない。
少なくとも国会に対する請願という、正式な政治入力の回路に入っていた。
ここは【確認済】とする。
次に見えてきた「地方議員」という回路
さらに調べると、2018年には、永田町の衆議院議員会館で「全国地方議員研修会」が
開催され、その内容に家庭教育支援条例の「成果」や「家庭教育支援法の必要性」が
含まれていたことが報じられている。
この研修会には、全国地方議員連絡会議世話人会が関わり、
熊本県で家庭教育支援条例を制定した地方議員などが登場していたとされる。
ここで重要なのは、単に「家庭教育支援法という言葉があった」ということではない。
地方議員を媒介とする政治ネットワークの中で、
この政策が共有されていたことが見えてくる点である。
これは、国家OSの入力回路として見るなら、かなり重要な観測点になる。
つまり、
政策要求
↓
研修・勉強会
↓
地方議員
↓
地方条例
↓
国政への政策要求
という回路が存在していた可能性が出てくる。
ただし、ここではまだ「統一協会からの入力」とは断定しない。
この回路を構成する団体・人物の関係を、
さらに一次資料で確認する必要がある。
そして「統一協会との接点」が出てくる
ここで、2022年以降に公表された資料と報道を重ねる。
統一協会関連団体が
家庭教育支援法を推進していたことについては、
複数の資料が存在する。
例えば、
一宮市議会は2022年12月の意見書で、
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)が推進する
家庭教育支援法には依らず、
現行法と「こども基本法」に基づいて
家庭教育施策を充実させるよう国に求めている。
ここでは重要なことが確認できる。
「家庭教育支援法」と旧統一教会との関係が、
地方議会の公式文書でも問題として認識されていた。
これは【確認済】とする。
しかし、ここで一旦止まる
ここが今回の監査で最も重要なところである。
ここまでの資料をつなげれば、確かに興味深い線が見えてくる。
家庭教育支援法という政策要求が存在する。
国会への請願という入力回路に入っている。
地方議員の研修・ネットワークでも取り上げられている。
統一協会との関係を指摘する公的資料も存在する。
しかし、ここから先は慎重でなければならない。
「だから統一協会が自民党に家庭教育支援法を入力した」と、
現時点で結論づけることはできない。
なぜなら、まだ入力経路の中間部分が欠けているからである。
監査台帳を作ってみる
| 監査項目 | 現在の評価 |
|---|---|
| 家庭教育支援法という政策要求の存在 | 【確認済】 |
| 国会への請願 | 【確認済】 |
| 地方議員ネットワークでの取り扱い | 【確認済】 |
| 家庭教育支援条例との接続 | 【確認済】 |
| 統一協会関連団体による推進 | 【確認済】 |
| 特定政治家への具体的入力 | 【要照合】 |
| 自民党政策への具体的入力経路 | 【要照合】 |
| 国会議員による政策形成への直接反映 | 【要照合】 |
| 政府の政策決定への直接的影響 | 【未確認】 |
ここで初めて「監査」になる
この表を見ると、今回の調査で何が分かり、
何が分かっていないのかが見えてくる。
ここが重要である。
監査とは、「疑わしいから調べる」ことではない。
確認できた事実と、まだ確認できない事実を分離することである。
今回、家庭教育支援法については、
かなり早い段階で複数の入力回路が見えてきた。
しかし、政治OSの中心部、
つまり国政政党の政策形成や政府の意思決定へ、
どのように接続したのかについては、まだ空白がある。
だから次に調べるべき対象が決まる。
次の監査対象は「誰が、いつ、言ったのか」
次に必要なのは、人物と時間軸である。
家庭教育支援法について、
誰が最初に政治課題として取り上げたのか。
誰が法案化を目指したのか。
どの議員が国会で取り上げたのか。
どの議員が関連団体と接触していたのか。
その接触の前後で、政策上の発言に変化があったのか。
ここまで時系列を重ねる必要がある。
さらに、政策そのものの起源も確認しなければならない。
もし家庭教育支援法という構想が、統一協会とは無関係に、
それ以前から複数の政治家や研究者によって提唱されていたのであれば、
「統一協会からの入力」という仮説は弱くなる。
逆に、
特定の時期に関連団体から政策要求が出され、
その直後に特定政治家が同じ政策を取り上げ、
その後に政党政策へ入ったという時系列が確認されれば、
入力接点としての重要性は高まる。
現在の暫定判定
現段階では、こう評価する。
「家庭教育支援法」という政策は、政治領域へ実際に入力されていた。
そして、その周辺には統一協会関連団体、地方議員、研修会、地方条例、国会請願など、
複数の政治的ネットワークが存在していた。
しかし、
「統一協会からの入力が、国政の政策決定を直接動かした」
というところまでは、まだ確認できていない。
したがって暫定評価は、
【入力の存在】確認
【入力経路の一部】確認
【政治OSへの接続】一部確認・要照合
【政策決定への因果関係】未確認
とする。
――ここから先が、本当の監査である
今回、ようやく「監査する」という言葉を、
実際の資料にぶつけるところまで来た。
そして、最初から一つのことが分かった。
政治への外部入力は、
一人の政治家と一つの団体だけで完結しているとは限らない。
団体、研修会、地方議員、条例、請願、国会議員、政党、行政。
それぞれの回路が重なりながら、政策が形成されていく。
だから次は、人物と年代を入れる。
「誰が、いつ、誰から何を受け取り、それをどこへ持っていったのか。」
ここまで追えたとき、初めて「入力接点」という言葉が、具体的な監査記録になる。
観測は、ここから実査へ入る。
アトラッシ監査状況
監査対象:家庭教育支援法
現在の段階:【対応中】
次の監査:政策要求の起点・人物・年代・国会議員への入力経路の照合
つづく。
▼ この観測に至るまでのアトラッシ更新記録
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